· 技術士第二次試験  · 12 min read

技術士第二次試験 筆記試験 成績開示データ可視化

Xに投稿された成績開示142件を整理・可視化しました。偏りのあるサンプルという前提のうえで、合格・不合格の構造と「最後まで諦めなくていい理由」を見ていきます。

Xに投稿された成績開示142件を整理・可視化しました。偏りのあるサンプルという前提のうえで、合格・不合格の構造と「最後まで諦めなくていい理由」を見ていきます。

はじめに

技術士第二次試験では、その年度の口頭試験の合格発表後に、日本技術士会に対して書面による個人情報の開示請求をすることにより、自身の得点を知ることができます。

日本技術士会 プライバシーポリシー
開示等請求様式 > 技術士試験に関わる個人情報の場合

毎年、多くの受験者が、その結果をXに投稿することが恒例になっているようです。

そこで、Xに投稿された技術士第二次試験の成績開示結果の中から、筆記試験の結果を集計し、整理・可視化してみました。

  • 対象年度:2019(R1)〜2025(R7)年度(令和以降の現行試験制度下)
  • サンプル数:Xに投稿された成績開示結果 142件(合格68・不合格74)
  • 総合技術監理部門を除く

結論を先に言うと、選択科目Ⅱか選択科目Ⅲのどちらかが今ひとつであったとしても、合格の可能性は十分にあります。最後まで諦めないための材料として読んでいただければと思います。


⚠️ このサンプルの限界

このコラムを読む前に、このサンプルの性質を明確にしておきます。ここを誤ると結論を過大に解釈します。

  • 非常に偏ったサンプルです。 Xで受験者本人が成績を自発的に公開した画像・テキストの集まりであり、無作為抽出ではありません。合格者・惜敗者ほど投稿しやすく、大きく崩れた人は投稿を控えがちと考えられるため、本来の母集団より上位寄りに偏ると推測されます。実際、本サンプルにおいて、筆記試験の合否決定基準を満たす割合は 47.9% ですが、対象年度の筆記試験における累計合格率は 11.7% (総合技術監理部門を除く技術部門)です。この乖離自体が、母集団を代表していないことの証左といえます。
  • 対象年度の累計受験者数が 141,185人である一方で、サンプル数は n=142 と限られます。
  • 年度ごとのサンプル数が小さいため、年度別・部門別の比較は行いません。採点基準は対象年度・部門を問わず、一定であるとみなします。

つまり、本コラムにおける割合や平均などの絶対値は全受験者に一般化できません。一般化できるのは、構造的な傾向に限られます。


筆記試験について

科目と配点

  • 必須科目Ⅰ(40点満点)
  • 選択科目Ⅱ(30点満点)
  • 選択科目Ⅲ(30点満点)

合否決定基準

  • 必須科目Ⅰが60%以上
  • 選択科目Ⅱと選択科目Ⅲの合計が60%以上

各科目における得点ランク

  • A:60%以上の得点
  • B:40%以上60%未満の得点
  • C:40%未満の得点

以降、必須科目Ⅰは必須Ⅰ、選択科目Ⅱは選択Ⅱ、選択科目Ⅲは選択Ⅲと記します。


1. 全体像 — 得点はどこに分布するか

必須Ⅰの得点率を横軸、選択Ⅱと選択Ⅲの合計得点率を縦軸に取り、合否決定基準と重ねた散布図です。右上の緑が合格圏です。

得点散布図

  • 合格者の得点は、合否決定基準(60%)をやや上回る範囲に集中し、高得点側へは伸びにくい傾向があります。

    科目中央値四分位範囲平均値最大値
    必須Ⅰ65.0%61.3〜71.7%67.2%87.5%
    選択Ⅱ+選択Ⅲ65.0%61.7〜68.3%66.2%91.7%
  • 合格者・不合格者を含む全142件の統計では、必須Ⅰと選択Ⅱ+選択Ⅲは、弱い正の相関を示します。

    • 相関係数r=0.38であり、片方の出来からもう片方は読めません。各科目を独立に対策する必要があります。

2. 各科目の得点分布

科目ごとの得点率分布を、合格者(青)・不合格者(オレンジ)で色分けしました。

得点率ヒストグラム

  • 選択Ⅱは平坦に分布し、受験者の得点が散らばりやすい科目といえます。

    • 得点率40〜80%の階級度数の変動係数は、選択Ⅱは0.37で最小(必須Ⅰ:0.82、選択Ⅲ:0.71)であり、突出した山がありません。
  • 合格者・不合格者を含む全142件の統計では、選択Ⅱと選択Ⅲは、弱い正の相関を示します。

    • 相関係数r=0.32であり、片方の出来からもう片方は読めません。
  • 合格者・不合格者を含む全142件の統計では、選択Ⅲは選択Ⅱより得点がやや高い傾向にあります。

    科目中央値四分位範囲平均値最大値
    選択Ⅱ60.0%51.7〜66.7%59.5%91.7%
    選択Ⅲ61.7%55.0〜68.3%61.0%91.7%

3. 合格者・不合格者の内訳(得点ランクパターン)

必須Ⅰ・選択Ⅱ・選択Ⅲ の得点ランクを3文字で並べたパターンの内訳です。

合格者・不合格者の内訳

※四捨五入の関係で、合計が100%にならない箇所があります。

合格

  • 合格者の43%は「AAA」ではありません。
    • 選択のどちらか一方がBであり、もう一方のAとの合算で60%を超えて合格しています。
    • AAA 57%
    • ABA 29%
    • AAB 13%
  • 同じ得点ランクパターンでも合否が分かれます。
    • ABAは、合格者20人・不合格者14人
    • AABは、合格者9人・不合格者7人

不合格

  • 不合格の理由は「必須Ⅰ」「選択Ⅱ+Ⅲ」「両方」に分かれ、不合格者の66%は、どちらか一方の基準は満たしています
  • 不合格の最多パターン上位は次のとおりです。
    • ABA 19%
    • ABB 16%
    • BAA 16%
  • 本サンプルでは、不合格の大半はCではなく、あと一歩のBの積み重ねで構成されています。

4. 「あと何点で合格だったか」

不合格者ごとに、合格に必要な追加点(必須Ⅰの不足+選択の不足の合計)を計算しました。

合格に必要な追加点の分布

  • あと1点で不合格者の16%が、あと2点で不合格者の32%が、合格圏に入ります。

    合格まで必須Ⅰ選択Ⅱ+選択Ⅲ計(不合格に占める割合)
    あと0.5点以内1人3人4人(5%)
    あと1.0点以内5人7人12人(16%)
    あと1.5点以内9人12人21人(28%)
    あと2.0点以内9人15人24人(32%)

まとめ

偏ったサンプルという前提のうえで、次のような構造的傾向が得られました。

  1. 合格者の得点は合格ラインをやや上回る範囲に集中し、突き抜けた高得点は多くありません。
  2. 合格者の43%は「AAA」ではなく、選択の一方が「B」 です。したがって、合格と不合格との間には僅かな差しかありません。
  3. 不合格の多くは「あと数点」。大崩れではなく、僅差で届かないケースが中心です。
  4. 「必須Ⅰ」と「選択Ⅱ+選択Ⅲ」との間の相関は弱く、「選択Ⅱ」と「選択Ⅲ」との相関も弱いです。つまり、ある科目の手応えが悪くても、他の科目まで悪いとは限らないといえます。

必須Ⅰを落とすことはできませんが、選択Ⅱか選択Ⅲのどちらかが今ひとつであったとしても、合格の可能性は十分にあります。

試験の場で、想定外の出題があったとしても、うまく解答できそうにないと感じても、最後まで諦めないでください。


謝辞

Xで成績開示を投稿してくださった受験者の皆さまに感謝します。全体の傾向を把握するためには不合格のデータが有用ですが、不合格のデータを投稿することは勇気がいることだと思います。この可視化は、皆さまによるデータの共有があって初めて成り立ちました。

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